令和の不登校
不登校とは完全に学校に行かない状態を指すのではなく、行ったり行かなかったりを繰り返すような場合も含まれます。病気や経済的な理由以外で、年間30日以上欠席すると「不登校」として扱われます。
今の子どもたちにとって、不登校は特別なことではなくなってきています。文部科学省の令和5年度調査によると、全国の不登校の小学生は約13万人、中学生は約21万人。これは、小学生ではおよそ49人に1人、中学生では15人に1人が学校に通えていない状態にある計算です。不登校の数としては中学生が最も多いものの、最近では小学生の増加が目立っており、早い時期から学校に行きづらさを感じる子どもが増えていることがうかがえます。
近年、不登校の子どもたちの様子はこれまでとは少しずつ変化してきています。
不登校の理由は子どもによってさまざまですが、これまでは「友人トラブル」「学業のつまづき」など比較的明確なきっかけがあることが多く、支援の方向性も見えやすい傾向にありました。現在もそうしたケースはありますが、近年では「これといった理由が分からない」「本人も理由が説明できない」というタイプの不登校が目立つようになってきています。
周囲もどのように関われば良いか分からず、戸惑うことも少なくありません。特にご家族の方は、「何か悩みがないか聞いてもはっきりとした返事がない」「無理に聞くと不機嫌になる」といった状況に、心配や焦りを感じながらも手立てが見つからず、悩みを深めてしまうことがあります。
先述のように、不登校のきっかけには「友人とのトラブル」「体調不良」など明確なものもあれば、はっきりとしたきっかけが見られないケースも多くあります。たとえ最初のきっかけが解消されたとしても、時間の経過とともに別の理由が加わり、登校が難しくなることもあります。
例えば、「友人トラブル」がきっかけで休み始めたとしても、しばらく欠席が続けば授業についていけなくなってしまうことがあります。すると今度は、「行っても授業が分からない」「勉強についていけないまま椅子に座っているのがつらい」といった新たな不安やつらさが生まれ、学校にいくことが難しくなる場合があります。
そのため、子どもの不登校を理解するには、「何がきっかけだったのか(原因)」以上に、「今の状態がなぜ続いているのか(維持要因)」に目を向けることが大切になります。
≪維持要因の例≫
- 勉強の遅れ
- 生活リズムの乱れ
- 登校時に特別な目で見られるのがつらい
- 家庭の方が居心地が良い
- 登校に対する不安 など
子どもの「動き出す力」は、待つだけでは育ちにくいこともあります。
「エネルギーが溜まるまで待つ」ことは、休養と回復を優先したほうが良い段階では有効ですが、それだけではなかなかうまくいかないことが多いのが実情です。
不登校の状態が続くと、友達とのやりとりが減ったり、外に出る機会が少なくなったりして、子どもの社会との繋がりがだんだんと小さくなっていきます。家の中でも孤立してしまうような状況になることもあります。
そんな中で「自分で頑張って動いてごらん」と言われても、子どもにとってはとても難しく、学校に戻るためのハードルはますます高く感じられてしまいます。
では、どうすればいいのでしょうか。
大切なのは、「子どもが動き出しやすくなる環境」を周りの大人が整えていくことです。ただし、保護者だけで解決しようとするのは難しいもの。保護者だけでなく、学校の先生や支援の専門家など子どもと関わる全ての大人がチームとなって、少しずつ子どもに合った環境を整えていくことが大切になります。
たとえば・・・
このように、関わる大人―保護者、学校の先生、支援の専門家などが動いて、少しずつ環境を変えていくことで、子どもにも少しずつ変化が表れていきます。小さな一歩でも、それがきっかけとなって、また次の一歩につながっていき、こうした積み重ねの中で、結果として学校に戻れるようになるケースが少なくありません。
焦らず、でも「何もしない」でもなく。。。
子どもが動きやすくなるように、大人の側から小さな働きかけをしていくことが、何より大切です。
▶うまくいきやすくなるコツ◎
▪子どもがSOSを出せる関係づくり
日頃から、できる範囲で子どもの気持ちに耳を傾け、安心してSOSを出せる関係を少しずつ育てます。
▪最初から「学校にいく」ことを目指さない
子どもの変化には段階があります。例えば、不登校が長引いている子にとって、いきなり「学校に行こう」というのはあまりに大きなジャンプです。まずは「朝起きて朝食を食べる」「朝食を食べて着替える」-そんな変化が最初のステップになるかもしれません。小さなステップを一つずつ積み重ねる中で、できることや行ける場所が少しずつ広がってくると、「学校に行く」ということも無理のない選択肢として見えてくるようになります。
▪保護者自身をいたわる時間も大切に
保護者自身も気持ちを安心して話せる場を持ったり、ときには趣味や外出で息抜きしてみましょう。保護者が肩の力を抜くことは、子どもの心も軽くします。
▪頼れる先を持ち、つながりを切らさない
困ったときに相談できる人や場所があると安心です。学校の先生やスクールカウンセラー、支援の専門家などと小さなつながりを続け、完全に関係が途切れないようにしておくことが大切です。
▶避けたほうがよい関わり方🚫
▪ゲームやスマホを取り上げる
今の子どもにとってそれが精いっぱいの行動であれば、その先の前進が難しくなります。代りに、本人ができそうな別の行動を一緒に体験したり、見つけてみるのも一つの方法です。
▪外出や遊びを一律で禁止する
外出や遊びができるようになるのは、元気が少しずつ回復してきたサインでもあります。外出や遊びは、社会とのつながりや体力の回復につながる大切な機会です。内容や時間帯にルールを設けながら、登校への準備として上手に活用してみましょう。
▪約束を途中で変える
例:「学校の門まで行く」と約束していたのに、門まで行ったら「せっかくだから先生にも会ってみようか」と誘うことは、子どもからすれば「だまし討ち」のように感じます。大人が欲張ると不登校支援は上手くいきません。 小さな約束でも必ず守り、その場で見せた子どもの頑張りや努力にしっかり目を向けて認めることで、次の一歩に進みやすくなります。
当ルームでは、不登校のお子さんとご家族とともに歩みながら、少しずつステップを踏み、お子さんが動き出せるよう環境づくりのサポートを行っています。
最初からお子さん本人が一緒でなくても大丈夫です。実際、はじめはご家族だけでご相談いただくケースがほとんどです。お子さんの状況やご家族のお気持ちをゆっくり丁寧に整理しながら、無理のない方法を一緒に見つけていきます。
ご家族が相談すること自体が、すでに環境を整える第一歩です。「今のままではつらい」「何が正解かわからない」、そんなお気持ちをそのままお話しください。ここから一緒に考えていけたらと思います。
参照元
・文部科学省『令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果』
・下島かほる『登校しぶり・不登校の子に親ができること』 講談社
・神村栄一『教師と支援者のための”令和型不登校”対応クイックマニュアル』 ぎょうせい